2026.03.16

物流アウトソーシングのリアル 〜「丸投げ」から抜け出し、事業を加速させる正しい発送代行の形〜①

第1回:あなたの物流にも限界が来る 〜なんのために物流をアウトソーシングするのかを問う〜

「物流・製造業界で注目される自動化設備の実態」シリーズ、そしてその前の「WMS導入におけるリアルな失敗体験談」シリーズでは、システムや設備といった「ツール」をどう現場に落とし込むか、というお話をしてきました。お付き合いいただいた皆様、ありがとうございます。

そこで繰り返しお伝えしてきた最大のメッセージは、「システムや設備は魔法の箱ではない」「導入の『目的』と『業務フローの再構築』が伴わなければ無用の長物になる」ということでした。

今回から始まる全3回の新シリーズ「物流アウトソーシングのリアル 〜「丸投げ」から抜け出し、事業を加速させる正しい発送代行の形〜」では、少し視点を変え、より根源的なテーマに踏み込みたいと思います。それは「物流アウトソーシング(発送代行)」についてです。

自社で行っていた物流業務を、外部のプロフェッショナルである物流会社に委託する。あるいは、現在委託している物流会社から、別の物流会社へ乗り換える。EC化率の高まりや慢性的な人手不足を背景に、今、非常に多くの企業様がこの「アウトソーシング」を検討、あるいは実行しています。

しかし、ここで皆さんに一つ、厳しい現実をお伝えしなければなりません。

「WMS」や「自動化設備」の導入で起きた悲劇と全く同じことが、この「物流アウトソーシング」の現場でも日々繰り返されているのです。

とりあえずプロに任せれば、今のこの苦しい状況がなんとかなるだろう
あそこの物流会社は最新のロボットを入れているらしいから、うちのミスもなくなるはずだ

胸に手を当てて、考えてみてください。自社の物流を外に出そうと考えたとき、心のどこかにこのような「他力本願」な思いはありませんでしたか?

アウトソーシングも、WMSや自動化設備と同じです。外部の物流会社という「リソース」を使うことに過ぎません。そこに明確な「目的意識」がなければ、必ず失敗します。

本シリーズでは、『物流アウトソーシングとは、正しい発送代行の依頼』と題して、コンサルタントとして数多くの「失敗する委託」「成功する協業」を見てきた現場目線から、絶対に外してはいけないポイントを解説していきます。

なぜアウトソーシングを検討するのか?「限界」の正体を見極める

企業が物流のアウトソーシング、あるいは移管を検討し始めるきっかけは、ほぼ100%、自社の物流になんらかの「限界」を感じた時です。

しかし、その「限界」の正体を、解像度高く把握できている企業は少ないのが実態です。ただ漠然と「今のままじゃ回らない」「現場が悲鳴を上げている」という危機感だけで、複数の物流会社に「お見積もりをお願いします」と声をかけてしまっていませんか?

物流の限界は、大きく分けて「キャパシティ(容量)」「リードタイム(時間)」「コスト(費用)」の3つに分類されます。まずは、自社が直面している限界がどれに当てはまるのか、主眼をどこに置くのかを明確にしなければなりません。なぜなら、主眼の置き方によって、選ぶべき物流会社の姿は全く変わってくるからです。

キャパシティ(容量)の限界

最も分かりやすいのがこれです。「荷物が増えすぎて、倉庫に入りきらない」「セールの時期になると、自社の人員(パートさんや社員)だけでは出荷作業が終わらず、数日遅れになってしまう」という状況です。

物理的なスペースの限界と、作業をこなす労働力の限界。もしこれに主眼を置くのであれば、求めるべきは「大規模な波動に耐えうる柔軟なスペースと人員体制」、あるいは「ピッキングや梱包を効率化する高度な自動化設備」を持っている物流会社になります。

リードタイム(時間)の限界

「お客様から『注文したのに届くのが遅い』というクレームが増えた」「競合他社は『翌日配送』を謳っているのに、自社は『3営業日以内』しか約束できず、購入機会の損失が起きている」といったケースです。

特にECの世界では、Amazonや楽天が配送スピードの基準を極限まで引き上げたため、リードタイムの長さは致命的な競争力低下を招きます。この限界を突破することが主眼であれば、求めるべきは「主要な消費地(関東や関西など)に近い立地」であり、「土日祝日や深夜の稼働にも対応している」物流会社です。少し保管料が高くても、リードタイムを短縮できる拠点を選ぶことが正解になります。

コスト(費用)の限界

売上は伸びているのに、物流比率(売上に対する物流費の割合)が高止まりして利益を圧迫している」「自社で倉庫を構え、社員を配置している固定費が重すぎる」というケースです。

物流をアウトソーシングする最大のメリットの一つは、家賃や人件費といった「固定費」を、出荷件数や保管パレット数に応じた「変動費」に変換できることです。コストの限界を突破したいのであれば、徹底的な標準化により作業単価を抑えている物流会社や、複数の荷主の荷物を混載することで配送運賃のスケールメリットを出せる大型の物流会社を探すことになります。

このように、自社の痛みが「キャパシティ」なのか「リードタイム」なのか「コスト」なのかによって、処方箋は全く異なります。

「とにかく全部よくしてほしい」というのは、システム導入の際に「とにかく全部自動化してほしい」と言うのと同じで、結局どれも中途半端な結果に終わるか、とてつもない高額な見積もりを出されて終わるのがオチです。

まずは、「なぜ外に出すのか」の目的の優先順位を明確にすること。これが第一歩です。

鎮痛剤ではなく、体質改善を。中長期計画を持っていますか?

さて、限界の正体を見極め、目的を定めたとしましょう。しかし、ここで多くの企業が陥る「第二の落とし穴」があります。

それは、「足元の課題解決だけを考えてしまう」という落とし穴です。

コンサルティングに入らせていただき、経営層や物流担当者の方とお話しすると、「今月のセールで出荷がパンクしたから、来月には新しい倉庫に荷物を移したい」「今の倉庫はミスが多いから、とにかく早く別の倉庫に変えたい」と、非常に近視眼的なご要望をいただくことが多々あります。

気持ちは痛いほど分かります。現場は火の車で、お客様にはご迷惑をおかけしている。一刻も早く「鎮痛剤」を打ちたい状況でしょう。

しかし、本当にそれで十分でしょうか?

物流のアウトソーシングは、一度決めたらそう簡単に元に戻したり、別の会社に変えたりできるものではありません。システム連携の開発、商品の移管、新しい業務フローの構築など、膨大なエネルギーと費用がかかります。「とりあえず今の痛みが治まればいい」という選び方をすると、1年後、2年後に必ず「別の痛み」に苦しむことになります。

アウトソーシングを検討する際は、手元の課題解決だけでなく、必ず「2〜3年スパン」、さらには「10年後の中長期計画」を見据えて考える必要があります

例えば、今は月間3,000件の出荷で、コスト削減を主眼に地方の小規模な倉庫に委託したとします。しかし、御社の事業計画では3年後に月間30,000件、5年後には月間100,000件を目指しているのではないでしょうか?

もしその事業計画が達成された時、今の「コスト重視で選んだ小規模な倉庫」は、その物量に耐えられるでしょうか

  • 10万件の出荷データを処理できる強固なWMS(倉庫管理システム)を持っているか?
  • それだけの物量を捌くための人員を、その地方で新たに採用できるのか?
  • 出荷量が増えたときに、自動梱包機などの設備投資を共にしてくれる体力のあるパートナーなのか?

もし耐えられないのであれば、事業が一番スケールし、アクセルを踏まなければならない最高のタイミングで、「物流がボトルネックになって売れない(出荷制限をかけざるを得ない)」という最悪の事態を引き起こします。そして、慌ててまた莫大なコストをかけて新しい倉庫へ移管プロジェクトを立ち上げることになるのです。

今の痛みを和らげることはもちろん重要です。しかし、同時に「自分たちのビジネスは将来どうなりたいのか」「その未来のスケールに、共に歩んでいけるパートナー像とはどのようなものか」を逆算して考えなければなりません。事業規模が今の10倍、100倍になった時、その物流会社は「事業成長のインフラ」として機能し続けられるか。その中長期的な視点を持って初めて、真の意味での「物流戦略」と呼べるのです。

物流はあなたのビジネスにとって「何の役割」を果たすものか?

ここまで、アウトソーシングの目的意識(主眼の置き方)と、中長期的な視点の重要性についてお話ししてきました。

第1回の最後に、皆様に問いを投げかけたいと思います。

物流は、あなたのビジネスにとって『何の役割』を果たすものですか?

かつて、物流は単なる「コストセンター」でした。商品を右から左へ、とにかく安く、遅滞なく動かせばいい。お客様の目に直接触れることはなく、ただの「裏方の作業」と見なされてきました。だからこそ、多くの経営者は物流を「いかに安く叩くか」という対象としてしか見ていませんでした。

しかし、今は違います。

特にECやD2Cのビジネスにおいて、物流は「顧客体験の最前線」であり、リピート売上を生み出す「プロフィットセンター」の源泉へと進化しています。

お客様がスマートフォンで商品を注文し、ワクワクして待っている。そして、届いた段ボールを開けた瞬間。綺麗に梱包された商品、手書きのサンクスカード、適切な緩衝材。その「箱を開ける体験」こそが、ブランドに対するロイヤルティを決定づける瞬間なのです。

もし、あなたのビジネスにおいて顧客に感動を与えること最も重要な価値観であるならば、物流会社を選ぶ基準「1ピースあたりの梱包単価が10円安いこと」ではありません。

「こちらの意図を汲み取り、ブランドの世界観を体現する丁寧な梱包をしてくれるか」
「特別なギフトラッピングの要望に、柔軟に、かつ正確に応えてくれるか」
「万が一返品や交換が発生した際、お客様に寄り添った対応ができるか」

こういった定性的な品質や、現場のホスピタリティこそが、最も重視すべき評価軸になるはずです。

物流のアウトソーシングとは、単に「作業の外部化」をすることではありません。

自社のブランド価値を共に創り上げ、事業の成長を根底から支える「パートナーの選定」なのです。

1.「なぜ外に出すのか(限界の突破)」

2.「未来の事業計画に耐えうるか(中長期視点)」

3.「ビジネスにおいて物流に何を求めるのか(役割の再定義)」

この3つの問いに対する答え、明確な目的意識を自社内で徹底的に議論し、言語化すること。これが、正しい物流アウトソーシングの「第1歩」となります。

次回予告

次回、第2回では、この明確化した「目的意識」を武器にして、いよいよ物流会社との具体的なコミュニケーションに入っていきます。

「はじめまして」の商談から、自社の要件をどう正確に伝え、比較可能な「見積もり」をどうやって引き出すのか。曖昧な提案に騙されず、自社の本気度を伝えて相手の本気を引き出す、極めて実践的な「RFP・提案依頼」と「要件定義」のリアルな手法について解説します。

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