2026.02.24
今物流・製造業界で注目、自動化設備の実態②~WMS、AGV、自動梱包、自動検品…それぞれの「役割」と「リアル」を深堀りする~
前回からスタートした「物流・製造業界で注目される自動化設備の実態」シリーズ。
第1弾では、「日本における自動化設備導入の歴史」と題し、インダストリー4.0という大きな潮流から、国内の物流現場が抱えてきた課題の変遷、そしてなぜ今「自動化」が叫ばれているのか、その背景について皆さんと一緒に勉強してきました。
歴史を振り返ることで、自動化設備というものが単なる「便利な機械」ではなく、その時代の「現場の苦悩」を解決するために進化してきたソリューションである、ということがご理解いただけたのではないかと思います。重要なのが「目的意識」ということについても最後に強調させて頂きました。
さて、第2弾となる今回は、いよいよ具体的な「設備(ソリューション)」の中身について、深堀りをしていきたいと思います。
世の中には数多くの自動化設備が存在しますが、今回は特に今日の物流・製造現場において主要な役割を果たす4つのカテゴリ――「WMS(倉庫管理システム)」「AGV(無人搬送車)」「自動梱包機」「自動検品」――にスポットを当てて解説していきます。それぞれの設備が「本当はどういう役割を担っているのか」、そして「導入において何が肝(キモ)になるのか」。良い面も悪い面も含めた「リアルな実態」を、皆さんと共有していければと思います。既に設備導入をされている現場の皆様も、是非再度「目的意識の整理」のためにご覧頂ければと思います。
目次
1.すべての司令塔「WMS(倉庫管理システム)」
~単なる在庫管理ソフトだと思っていませんか?~

まず最初に取り上げたいのが、WMS(WarehouseManagementSystem)です。
「WMSなんて、もう知ってるよ」「うちはもう導入してるから関係ないかな」と思われた方も多いかもしれません。確かに、今やWMSは多くの倉庫に導入されており、在庫管理のデファクトスタンダードになっています。入荷検品、在庫照会、出荷指示……これらをデジタルで管理するシステム、という認識で間違いありません。導入にまつわるリアルな実態やエピソード、勘所については前シリーズの記事でも触れた通りです。
しかし、これからAGVやロボットアームといった「物理的な自動化設備(マテハン)」を導入しようと考えたとき、このWMSの捉え方をアップデートしなければならない局面に直面します。
これまでのWMSは、言わば「帳簿のデジタル化」が主目的でした。在庫がいくつあるか、どこにあるか、それを正しく記録することが仕事でした。ですが、自動化設備が動き回る現場において、WMSに求められる役割はガラリと変わります。
それは、「設備たちへの司令塔(脳)」としての役割です。
例えば、これから紹介するAGV(無人搬送車)を導入したとします。AGVは非常に優秀な「足」ですが、自分自身で「今、何を運べばいいか」を判断することはできません。「Aという棚にある商品を、Bという場所まで持ってきなさい」という明確な指示があって初めて動くことができます。この指示を出す大元になるのが、他でもないWMSなのです。
よくある失敗例として、高価な最新のマテハン機器を入れたのに、WMSが古いままで連携がうまくいかず、結局マテハンの能力を半分も出せていない、というケースがあります。また、WMSの運用が明確・正確になっておらず、正しい指示がだせず、せっかくの機械が全く稼働していない現場を見たことも少なくありません。
「在庫データはあるから大丈夫」ではありません。そのデータを、「どのタイミングで」「どのような形式で」設備側に渡すのか。この連携(インターフェース)の設計こそが、自動化プロジェクトの成否を握っていると言っても過言ではありません。
少し専門的な話をすると、WMSの下に「WCS(WarehouseControlSystem:倉庫制御システム)」という制御専門のレイヤーを挟む構成が一般的ですが、大元の指示を出すのはあくまでWMSです。
この「運用」の部分、つまりWMSがどのように業務フロー全体を指揮するかという設計図が描けていないと、どんなに高性能なハードウェアを持ってきても、それは「宝の持ち腐れ」になってしまいます。
この点については、本シリーズの第3弾(まとめ編)の最後でも改めて触れますが、まずは「自動化設備を動かすためには、その脳みそであるWMSの運用設計が最も重要である」ということを、ここで強く強調しておきたいと思います。
2.現場の足を支える「AGV(無人搬送車)」
~「運ぶ」だけではない、真の価値は「制御」にあり~

次にご紹介するのは、旧来から導入が進んでいますが、近年急速に注目・再度の普及が進んでいる「AGV(AutomatedGuidedVehicle:無人搬送車)」です。
床に貼られた磁気テープやQRコード、あるいはセンサーによるマッピングを使って、倉庫内を自律的に走行する台車のようなロボットです。
AGVの基本的な機能は、「ある地点からある地点へモノを運ぶ」ことです。「それなら、人が台車で運ぶのと変わらないじゃないか」と思われるかもしれません。確かに「運ぶ」という物理的な動作だけを見ればその通りです。しかし、AGV導入の真価は、単なる移動の代替だけではありません。
それは、「倉庫内ルーティング(移動経路)の最適化・標準化」にあります。人が作業をする場合、どうしても「ムラ」が出ます。ベテランの作業員なら最短ルートを通って効率よく運べるかもしれませんが、新人の作業員は遠回りをしてしまうかもしれない。途中呼び止められて移動が中断してしまうかもしれない。こうした「不確定要素」が、物流現場の生産性予測を難しくしていました。
一方、AGVはシステムで制御された通りに動きます。ここで重要になるのが、先ほどWMSの項でも触れた「制御」の話です。複数のAGVが同時に動く現場では、「いかに渋滞させずに、効率よく全体を動かすか」というルーティングの仕組みが極めて重要になります。
イメージしていただきやすいのが、自動車工場の製造ラインです。自動車のラインは、必要な部品が必要なタイミングで、必要な場所に正確に供給されることで成り立っています(ジャストインタイム)。これと同じことを、物流センターの中で実現しようとしているのが、高度なAGVシステムなのです。
例えば、ピッキングステーション(作業者が商品を取り出す場所)に対して、AGVが棚を運んでくるとします。この時、ステーションに到着するタイミングが早すぎればAGVが渋滞を起こして待ち時間が発生しますし、遅すぎれば作業者の手が止まってしまいます。
「今、このステーションの作業進捗はどうなっているか」
「次に必要な商品は、倉庫のどの位置にあるか」
「そこからステーションまでの移動時間はどれくらいか」
これらをリアルタイムに計算し、「供給のタイミング」を完璧に制御する。これこそがAGVシステムの真髄であり、導入における最大の難所でもあります。
単に「AGVを10台入れました」では意味がありません。現場のレイアウト、通路幅、そして商品が流れる量(物量波動)。これらをすべて加味した上で、最適な台数と最適なルーティングを設計する。そこまで深堀りして初めて、AGVは現場の強力な武器となるのです。
3.出荷の最後を締める「自動梱包機」
~「人手」からの脱却における最大の壁~

3つ目は、「自動梱包機」です。EC物流などで、ダンボール箱の組み立てから封函までを自動で行う設備です。一般的には、以下の2つの機械がセットで語られることが多いでしょう。
- 自動製函機:平らなダンボールを開き、底面をテープ止めして箱の形にする機械。
- 自動封函機・送り状貼付機:商品が入った箱の蓋を閉じ、テープ止めし、配送伝票(送り状)を自動で貼り付ける機械。
物流現場において、「梱包」という工程は、これまで最も自動化が難しい領域の一つとされてきました。なぜなら、扱う商品のサイズや形状がバラバラだからです。人であれば、「この商品は壊れやすいから緩衝材を多めに入れよう」「これは小さいから小さな箱を使おう」といった判断を瞬時に行い、柔軟に対応できます。この「気遣い」や「柔軟性」を機械に置き換えるハードルが高かったのです。
しかし、近年の技術進歩により、中に入っている商品の高さをセンサーで検知し、ダンボールの高さを自動で調整して折り目を入れる(=箱の容積を商品に合わせる)といった高度な梱包機も登場しています。これにより、緩衝材の使用量を減らし、運送効率(積載率)を高めることも可能になりました。
ここで私が強調したいポイントは、「前後工程との接続」です。自動梱包機は、基本的にベルトコンベア上を流れてくる箱を処理します。そのスピードは非常に高速です。人が手作業で梱包するのとは比べ物にならない速さで、次々と箱を送り出していきます。ここで問題になるのが、その「前」と「後」です。梱包機の手前で、作業者が商品を入れて箱詰めをする工程(ピッキング~投入)が、梱包機のスピードに追いついていなければ、高価な梱包機はアイドリング状態で待ちぼうけを食うことになります。逆に、梱包機から吐き出された後の工程(方面別仕分けやトラックへの積み込み)が詰まってしまえば、梱包機を止めざるを得なくなります。
自動梱包機を導入するということは、単に梱包作業を機械化するだけでなく、「ライン全体の流速(タクトタイム)を梱包機の能力に合わせて再設計する」ということを意味します。人がやっていた頃は、忙しい時は人を増やし、暇な時は人を減らすという調整ができましたが、機械は常に一定のペースで動くことを好みます。この「硬直性」を理解し、前後の工程を含めた全体最適の視点でラインを組めるかどうか。ここが、自動梱包機導入の成功と失敗の分かれ目になります。
4.品質の最後の砦「自動検品」
~バーコード検品で満足していませんか?~

最後、4つ目に取り上げるのが「自動検品」です。
物流現場における検品といえば、ハンディターミナル(HHT)を使って商品のバーコード(JANコードなど)を「ピッ」と読み取る、あの作業を思い浮かべる方が大半でしょう。これを「バーコード検品」と呼びますが、多くの現場では、ここまで導入できた時点で「うちはデジタル検品をやっているから大丈夫」と安心してしまっている現状があります。
しかし、私はあえて問いたいと思います。「本当にそれで十分でしょうか?」
バーコード検品は、確かに目視検品に比べれば精度は格段に上がります。ですが、一つひとつの商品のバーコードを探し、スキャナを当てるという作業は、人手がかかり、時間もかかります。バーコードを本当にスキャンしたかのポカヨケや、本当は1つずつスキャンしないといけないものをまとめて複数回1つの商品のみでスキャンするなどの、現場作業者のルール不徹底などのリスクもあります。
近年では、この品質を担保するために、スキャン作業を常にカメラで撮影し、クレームがあった際に映像で証拠を提出する、といったような会社様も出始めてきました。
「自動化」の文脈で今注目されているのは、この「スキャンする動作そのもの」をなくそうという動きです。
その代表格が、以下の3つのトレンドです。
- RFID検品:
電波を使って、箱に入ったままでも一括で情報を読み取る技術です。アパレル業界などを中心に普及が進んでおり、ゲートを通すだけで数百点の商品を一瞬で検品できます。 - 画像検品(カメラ検品):
高精度のカメラで商品を撮影し、AIによる画像認識で商品が正しいかを判別する技術です。バーコードがない商品や、野菜・果物のような個体差があるものでも検品が可能になりつつあります。パン専門店のレジなどでも急速に普及しています。 - 重量検品:
商品の「重さ」を高精度な秤(はかり)で計測し、マスタデータ(正しい重量)と比較することで、中身の過不足や異品混入をチェックする技術です。
これらの技術は、作業者の負担を劇的に減らす可能性を秘めています。 しかし、ここでも「リアルな」壁が立ちはだかります。それは「マスタデータの整備」です。例えば重量検品を行うためには、扱う全ての商品について、正確な「重さ」のデータがシステムに登録されていなければなりません。パッケージがリニューアルされて1g軽くなっただけでも、システムは「エラー(異品)」と判定してしまいます。
画像検品であれば、事前の学習データ(教師データ)が必要です。RFIDであれば、商品一つひとつへのタグ付けコストがかかります。
「機械を入れれば勝手にやってくれる」わけではないのです。その裏側には、地道なデータ整備や運用ルールの徹底という、泥臭い努力が必要になります。
それでも、自動検品に挑む価値は十分にあります。なぜなら、検品は「出荷品質の最後の砦」だからです。ここを人が介在しないレベルまで自動化・高度化できれば、誤出荷という物流現場最大のミスを限りなくゼロに近づけることができる。それは、荷主企業への信頼、ひいてはエンドユーザーの顧客満足度に直結する話だからです。
バーコード検品で終わっている現場が多い今だからこそ、もう一歩踏み込んで、こうした次世代の検品技術を検討してみる。それが他社との差別化に繋がるのではないでしょうか。
まとめ:それぞれの「点」を「線」にするために
いかがでしたでしょうか。
今回は「WMS」「AGV」「自動梱包機」「自動検品」という4つの主要な自動化設備について、それぞれの役割と、導入現場のリアルな実態について解説してきました。お読みいただいて感じられたかもしれませんが、これらの設備は、それぞれが独立して存在しているわけではありません。
WMSという頭脳からの指令を受け、AGVという足が商品を運び、人がピッキングしたものを自動梱包機が仕上げ、最後に自動検品が品質を保証する。これらすべての工程が、一本の線のようにスムーズに繋がって初めて、自動化の恩恵を最大限に受けることができます。
逆に言えば、どこか一つの工程だけを最新鋭にしても、前後の工程がボトルネックになっていれば、全体としての生産性は上がりません。「部分最適」ではなく「全体最適」。言葉にすれば月並みですが、実際に数多くの自動化設備を組み合わせて一つの巨大なシステムとして動かすには、この視点が欠かせません。
次回の記事では、更に高度な自動機器に触れ、自動化設備導入の肝についても最後にご説明します。
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