2026.02.13

今物流・製造業界で注目、自動化設備の実態①

今回から3回にわたりまして、「物流・製造業界で注目される自動化設備の実態」と題し、シリーズでの記事をお届けいたします。

まず第1弾となる今回の記事では、本格的なソリューションの紹介に入る前に、「日本における自動化設備導入の歴史」というものを、皆さんと一緒に勉強してみたいと思います。

なぜ、いきなり歴史の話をするのか。 もちろん、最新のソリューションをどんどんご紹介したいところではあるのですが、そのソリューションが「できるまで」に、一体どのような変遷を辿ってきたのか。 ここを理解することが、実は非常に重要だと私は考えています。

歴史を紐解くことで、それぞれの時代において、倉庫現場や製造現場がどのような「課題感」を抱えていたのかが見えてきます。 そして、その課題に対して、どのような「技術的な革新」をもって乗り越えようとしてきたのか、その取り組みを知ることができます。 これらを理解することが、翻って「今、自分たちの現場で起こっている問題」が一体何なのか、その本質をより具体的に掴むための一助になるのではないか。 そう考え、まず第1弾として、このテーマをご用意させていただきました。

産業全体の自動化の歴史「インダストリー4.0」

 

「物流倉庫の自動化の歴史」というお話をする前に、少しだけ横道に逸れて、「そもそも産業全体における自動化の歴史」とはどういうものだったのか、という点について簡単にお話をさせてください。

ここで非常に重要になる概念として、「インダストリー4.0」という言葉があります。 日本語に訳すと「第4次産業革命」という意味になりますが、これは2011年にドイツ政府が提唱した概念です。 IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)、ビッグデータといったIT技術を駆使して、製造プロセスを抜本的に、まさに「産業革命」のように見直していきましょう、という国家的なプロジェクトの中で謳われている考え方です。

ここで「第4次」と銘打たれているからには、当然「第1次」から「第3次」までが存在しました。 この変遷が、自動化の歴史そのものを示しています。

【第1次産業革命(インダストリー1.0)】

これは、皆さんが歴史の教科書で学んだ「産業革命」とほぼ同様です。 18世紀後半、蒸気機関の発明によって、それまで人間が手作業で行ってきたことを「機械化」する動きが起こりました。機械化のメリットは、人間の力では扱えないような重いものや大きなものを扱えるようになったことに加え、手作業で発生していたバラツキがなくなり、「均一な品質」のものを「コンスタントに」作り出せるようになった点にあります。

【第2次産業革命(インダストリー2.0)】

19世紀後半になると、今度は「電力」の活用が始まり、これにより「大量生産」が可能になりました。最も分かりやすい例が、自動車の生産ラインです。 ベルトコンベアの上に車体が流れ、そこに様々な部品が取り付けられて最終的に完成車になっていく、あの「流れ作業(ライン生産方式)」です。 この方式によって、生産性は飛躍的に向上しました。

【第3次産業革命(インダストリー3.0)】

そして1970年代以降、ライン化された工場に「コンピュータ」や「ロボットアーム」が導入され、作業そのものの「自動化」が進みます。先ほどの自動車工場の例でいえば、塗装のラインは今やほとんど無人で行われていますし、ドアのような大型部品の取り付けや、車体の溶接といった作業も、その多くが自動化されています。

【第4次産業革命(インダストリー4.0)】

そして現代です。 第3次までで実現した「自動化」を、IoTやAIによって繋ぎ合わせ、工場全体の「自律化」と「最適化」を目指そうというのが、インダストリー4.0の核心です。

大きな違いは、第3次までの自動化が、あくまで「人間が考えた、決まった業務(定型業務)」を機械にやらせるものだったのに対し、第4次では「AI自身が考える」点にあります。 センサーで収集した生産状況や部材の試合状況といったデータをAIが分析し、「生産速度を柔軟に変える」「工程の順番を入れ替える」といった判断を自律的に行い、工場全体を最適化しようという試みです。

なぜこんなことが求められるのか。 それは、従来の工場が「同じ品物を大量生産する」ことには長けていたものの、個別のカスタマイズや特例的な注文が入ると、途端に生産性が落ちてしまうという弱点を抱えていたからです。インダストリー4.0が目指すのは、そうした多様なニーズに対しても、工場自身が柔軟に生産工程を組み替え、常に最適な生産体制を生み出し続ける、まさに「考える工場」なのです。

「機械化」に始まり、「大量生産(ライン化)」を経て、「作業の自動化(ロボット化)」へ、そして「自律的な最適化(AI化)」へ。 これが、産業全体における自動化の大きな流れです。

物流業界における自動化の歴史

さて、ここから本題である「物流業界」の自動化の歴史に入っていきます。

大きな流れは先ほどのインダストリー4.0と似ているのですが、物流業界特有の課題と、その「技術が導入されたタイミング」に注目しながら、時系列で追っていきましょう。

1960年代~1970年代(高度経済成長期):『機械化』の時代

日本における物流自動化の黎明期は、1960年代から70年代の高度経済成長期に始まります。この時代にまず登場したのが「自動倉庫」です。 コンピュータ(と言っても、まだ黒い画面に緑の文字が映るような時代ですが)で制御されたクレーン(スタッカークレーン)が、人間の手が届かないような高いラックに保管されているパレットを、自動で入出庫する仕組みです。

もう一つ、この時代に普及したのが「コンベア」と「ソータ(仕分け機)」です。 特に宅配便や卸の業界において、それまで人が手で運んでいた荷物を、コンベアで自動搬送し、ソータで方面別に自動で仕分ける、という運用が広がりました。

これらはまさに、インダストリー1.0の「機械化」に相当します。 自動倉庫は「人の手が届かない高層空間を活用して保管効率を上げる」という目的を、コンベアは「人が運ぶ作業を機械に置き換えて楽にする」という目的を果たしたわけです。

1980年代~1990年代:『システム化』の時代

機械化が進んだ次のステップとして、「システム化」の波がやってきます。

ここで、今や当たり前となった「WMS(倉庫管理システム)」が登場します。 それまで人の頭や紙で管理されていた「どこに何があるか」というロケーション管理や在庫管理が、システム的に行われるようになり、定着し始めたのがこの時代です。WMSと時を同じくして普及したのが「ハンディターミナル」です。 商品に貼られたバーコードをスキャンすることで、「間違いなく入出庫する」という品質管理や、「いつどこを通過したか」というトレーサビリティ管理が可能になりました。 また、商品1個ずつではなく、パレット単位やケース単位でバーコード管理することで、より容易にモノを動かせるようになりました

まず機械(モノ)が導入され、次にそれを制御・管理するためのシステム(情報)が導入された、という流れです。

2000年代~2010年代:『EC化・ピース化』対応の時代

2000年代に入ると、物流業界は大きな転換点を迎えます。 「EC(Eコマース)」の急速な拡大です。

それまでの物流は、BtoB(企業間物流)がメインであり、荷姿もパレット単位やケース単位といった大きなものが中心でした。 しかし、ECの普及により、一般消費者への「個別配送」、それも「ピース単位(1個単位)」という非常に細かいニーズへの対応が求められるようになりました。この「荷姿の小型化・ピース化」という変化が、既存の自動化設備やシステムに大きな変革を迫りました。

WMSの管理単位は、パレットやケースから「ピース」へと細分化されました。 自動倉庫も、ただパレットを運んでくるだけでなく、ピッキングすべき注文データと連動し、必要なパレットを自動で作業者の元へ運び、人がピース単位で商品を取り終えたら、また自動で棚に戻っていく、といった高度なシステム設計が必要になったのです。棚のランプが光ってピッキングする場所を指示する「デジタルピッキングシステム」などが広く導入され始めたのも、この「ピースピッキング」の効率化が喫緊の課題となったためです。

2010年代後半~現在:『人手不足・自律化』対応の時代

そして現在に至る流れです。 EC化によるピース作業の増大は、物流現場において「圧倒的な人手」を必要としました。 それに加えて、日本社会全体が直面している「人手不足」という大きな課題が重なります。ここに来て、物流における自動化・システム化の目的は、従来の「効率化」や「品質向上」に加え、「人手不足への対応(省人化・無人化)」という側面が急速に強まってきました。

この流れで生まれてきたのが、Amazonの倉庫などで知られる「GTP(Goods To Person)」という考え方です。 従来は「人」が棚まで商品を取りに行っていましたが、それでは「歩く」「探す」といったムダな時間が発生します。 そこで発想を逆転させ、AGV(無人搬送車)に乗った「棚」が「人」のところまで自動でやって来る、という仕組みが主流になりました。さらに、従来のAGVが「A地点からB地点へ運べ」という指示を必要としたのに対し、近年では「AMR(自律走行ロボット)」が台頭しています。 これらは、指示がなくても自律的に人の後をついてきたり、最適なルートを自分で判断してモノを運んだりできます。

AIの活用も進んでいます。 従来のピッキングロボットアームは、飲料ケースのような決まった形・重さのモノしか扱えませんでした。 しかし今のロボットは、先端のカメラで「これから掴む商品」の寸法や形状を瞬時に把握し、AIが「最適な持ち方」を自ら判断して、柔らかい商品や不定形なものまでピッキングできるようになっています。 まさにインダストリー4.0の「自律化」が物流現場でも起きているのです。

まとめ:歴史の変遷は「目的」の変遷

物流における自動化の歴史を振り返ってみると、

1:機械化(自動倉庫、コンベア)

2:システム化(WMS、ハンディターミナル)

3:ピース化対応(デジタルピッキング、システム連携)

4:自律化・人手不足対応(GTP、AMR、AIロボット)

という流れで進化してきたことが分かります。

ここまで、産業全体の流れであるインダストリー4.0と照らし合わせながら、物流の自動化の歴史についてお話させていただきました。 いかがでしたでしょうか。

一口に「自動化」と言っても、その目的が「省力化」なのか「無人化」なのか、あるいは「生産性の向上」なのか「品質の向上」なのかによって、選ぶべきソリューションは全く異なってきます

今回あえて歴史のお話をさせていただいたのも、自動化の技術が生まれてきた背景には、その時代ごとに異なる「課題」と、それを解決しようとした「目的意識の変遷」があったのだ、ということを、皆様にまずご理解いただきたかったからです。

さて、第2弾、第3弾の記事では、自動倉庫や各種の自動化設備が、具体的にどのような特長を持っているのか、実際の例を交えながらお話を進めていければと思います。